女性が演じるリアルな文楽

江戸時代に生まれた文楽は、今日にいたるまで男性によって伝承されてきました。

「乙女文楽」はこの文楽を母胎としていますが、対照的に女性のみに演じることが許されています。しかもその操作方法は世界的にみてもユニークなもの。本家の文楽に劣らず、いま海外からも注目される存在です。同じ作品を演じながらも、女性らしい細やかな表現は、人形浄瑠璃をさらに身近に感じさせてくれるでしょう。

「義経千本桜」吉野山道行 photo by 加藤昭裕

乙女文楽とは

「人形浄瑠璃文楽」から生まれ、より親しみやすく工夫をこらした伝統人形芝居です。

「文楽」は、一体の人形を三人がかりで遣う「三人遣い」というスタイルで、そのために、細かいしぐさや深い感情表現が可能となり、歌舞伎と人気を奪いあうほどに発展したのです。これに対し「乙女文楽」は、この文楽の豊かな表現力を、たったひとりの遣い手によって可能にした「ひとり遣い」の形式です。

人形の外形はそのままに、構造と遣い方が工夫されています。

文楽の人形遣い五世桐竹門造たちが、昭和の初期に大阪ではじめ、人気を博しました。

女性のみによる伝承

photo by 加藤昭裕

文楽が演じ手を男性に限るのに対し、乙女文楽はその名のとおり女性が演じます。

当初は少女たちによって演じられましたが、その成長と時代の変化につれ、戦後は上演機会も少なくなっていきました。その中で近年まで芸の正統を伝えてきたのが、創始者桐竹門造師の直弟子、桐竹智恵子です。(2008年没)

さらにリアルな表現へ

photo by 加藤昭裕

演目、演出、音楽は「文楽」と基本的には同じです。そして創始者桐竹門造師以来、文楽に劣らぬ技術水準が求められてきました。

それに加え、「ひとり遣い」が、人形と遣い手の動きがより一体化された形式であることも手伝って、様式性の中に、女性の感性を生かした細やかな表現を加えました。「文楽」の世界を、現代人にさらに身近なものとする・・・それが乙女文楽です。

ひとみ座乙女文楽

photo by 加藤昭裕

「ひとみ座乙女文楽」は、人形劇団ひとみ 座において女性座員が、桐竹智恵子師に45年以上にわたり指導を受け、公演実績を積んで今日にいたったものです。

現在ではその芸系を継承し、乙女文楽を名乗ることを許された専門劇団です。

国内各地で公演活動を行うほか、海外においても、これまでフランス、スペイン、メキシコ、アメリカ、中国、インド等世界各地で公演、ワークショップを行い、高い評価を受けてきました。

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